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本当に大切なものは案外と重いものだ。


ギコギコと引き戸を開けてギコギコ閉める。
なんでこんなに思い扉をつけたのだろう、家のど真ん中に。

開けたり閉めたりを繰り返すたびに身体になじんできた重さ
ギコギコ閉めて、ふと顔を上げる
大好きなステンドグラスの窓が私の目の高さに組み込まれている
左端の方に少し隙間がある、中途半端に。

なんで、きちんと寸法を測ってくれなかったのかしら
この窓をねだったときに夫は高いからあきらめろと言った
だめよだめよだめよ!
大好きなものに囲まれて暮らすのよ!
それには、この窓が必要不可欠なのよ、と私は泣いた。

それから数日して、大きな箱が黒いねこのマークのトラックに乗っかり
我が家に運び込まれたのだ。

夫がしてやったりの顔で言う
オークションで手に入れた、元の値段の1/5だった。

ここのところ、彼が寝室にやってくるのが遅かったのは
私のためにオークションに参加していたからだったのだ

ありがとう!ありがとう!
わたしはそこいらへんを飛び回った
子供みたいに、子供たちが呆れるくらいに。


僕らの家だからね。
夫のしてやったりの声がしたのに

振り向くと誰もいなかった。


いつもの本棚の前に行くと、夫が笑ってる写真の中で。

私たちの家だものね、写真に話しかけた。


しっかし、この窓の左端のすきま風ったらひゅうひゅう
中途半端な優しさと、詰めの甘さが夫みたい


だから、ドアを開け閉めするたび文句を言って
左端のすきまから洗面所を覗いてみる
夫が髭をそっているのが見える
夫が髪を撫でつけているのが見える
夫が私を見つけて笑っている顔が見える


だから、淋しくなんかないの
私には、ギコギコと重くて窓の左端にすきまがある
古いこの扉があるから。


僕らの、私たちの、夫婦にとって
本当に大切なものは案外と重たくって
時に抱えきれなかったり開かなかったりするけれど
私はそれでも、あの人の妻で
あの人はそれでも、私の夫


さぁ、図書館に行きましょう
カウンターから一番遠い棚の一番下から
順番に借りれるだけ借りると決めたのだから


帰り道、夫のナップサックが背中でとても重かった
ねぇ、お父さん(私は夫をそう呼んでいた)
お父さんのナップサックは重いわね
大切なものは案外と重いのね
そんなことを話しかけるようにしながら帰ってきた。


あんまり背中の荷物が重いので家に帰ったとたんしりもちをついた
背中の荷物をおろしてみたら古臭いナップサック
中をあけたら読みもしないような本がたくさん入っていた。



私は少し途方に暮れた。

夕焼けは少しオレンジだった。

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